アサギマダラの特別講演会のお知らせ

2010年10月31日に

「日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクト公開シンポジウム」
にて、栗田による約45分の特別講演が行われます。


日本鱗翅学会は、10月31日の第57回大会の2日目に、
恒例のアサギマダラプロジェクト公開シンポジウムを開催します。
一般の方の参加が可能ですので、
興味のあられる方は下記にお越しください
(特に予約などは不要です。
当日直接会場に来訪されればよいと思われます)。


世話人:渡りチョウを調べる会(旧アサギマダラプロジェクト)


日時:2010年10月31日(日)15:10〜16:10


場所:東京大学弥生キャンパス(農学部)

 弥生講堂一条ホール (大会A会場)

 〒113-0033 東京都文京区弥生1-1-1 

 地下鉄(東京メトロ)南北線「東大前」下車1分


プログラム:

【特別講演】

 アサギマダラの11万頭のマーキング調査から見えて来たこと

 〜福島県グランデコスキー場での6年間の夏期一ヶ月連続調査を軸として〜

 栗田昌裕(群馬パース大学大学院)


【成果報告】

 アサギマダラの移動、最近の話題

 金沢 至(大阪市立自然史博物館)


特別講演要旨 (栗田)

 演者(栗田)は、全国のアサギマダラの発生頭数と移動の定量的側面の概略を把握することを目指して、2003年から、主に7県9ヶ所の標識地において、複数日連続調査を繰り返し行ってきた。その間の標識数の総計は11万頭を超えた。今回は福島県グランデコスキー場(以下、デコ平)にて、6年間に渡り、毎年8月に1ヶ月間滞在して、連日の標識調査を行なってきた結果の概略を紹介する(合計標識数は6万頭余)。

 講演では、アサギマダラの従来は注目されてこなかった謎と魅力の新しい側面を紹介したい。特に、「飛翔パターンの20分類」は大量の個体に接する中で得られた知見であり、また「南下移動開始の8種の兆候」は同じ地域で毎年長期間観察する中で得られた知見であり、その一部はデコ平以外では観察が困難と思われる現象も含んでいる。これらが、今後よりレベルアップしたアサギマダラの調査をするための有意義な提起となることを期待している。


以下が問い合わせ先になっています:

問い合わせは、

  大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科

  緑地環境科学専攻 緑地保全・創成学講座

  (昆虫学研究室)石井実さん

  Tel.  072-254-9412/9413   Fax. 072-254-9413

  ishii_m@envi.osakafu-u.ac.jp


----------------------------------------------------
追記。上記の要旨より詳しい概略を下記に掲載しておきます
時間の都合で、全部の内容を述べることは難しいかもしれませんので、
当日、取捨選択されることをご承知ください(栗田・記)。

 アサギマダラの11万頭のマーキング調査から見えて来たこと---「福島県グランデコスキー場での6年間に合計6万頭余を標識した夏期一ヶ月連続調査」を軸として
群馬パース大学大学院     栗田昌裕


【序】筆者は適切な数理モデルと確率・統計的手法を組み合わせれば全国のアサギマダラの発生頭数と移動の定量的側面の概略が把握できるのではないかと考え、2003年から、主に七県九カ所の標識地を定めて、複数日連続調査を繰り返し行い、自己再捕獲のデータを複数のモデルに当てはめて(個人レベルでの)評価を行って来た。その間の個人の標識数の総計は11万頭を超えた。今回は福島県グランデコスキー場(以下、デコ平)にて、6年間に渡り、毎年8月に一ヶ月間滞在して、連日の標識調査を行なって来た結果の概略を紹介する(合計標識数は6万頭余)。アサギマダラの従来は注目されてこなかった謎と魅力の新しい側面を紹介したい。特に、「飛翔パターンの二十分類」は大量個体に接する中で得られた知見で、「南下移動開始の八種の兆候」は同じ地域で毎年長期間観察する中で得られた知見であり、その一部はデコ平以外では観察が困難と思われる現象も含んでおり、今後よりレベルアップした調査をするための有意義な提起となることを期待している。

【主な内容】
1)■標識頭数の推移(年毎、日毎)。
2)■自己再捕獲に基く標識率の推移とその意義(年毎、日毎)。
3)■推計のためのモデルの紹介。
4)■各エリアの推計頭数の推移(年毎、日毎)。
5)■デコ平の地勢的特徴(裏磐梯の地理的特異性。特に、磐梯山の大爆発以後の土地利用の推移。森林遷移、植物相の現状、地形的特徴、気象上の特徴)、
6)■雌雄比の推移とその意義付け、
7)■交尾率の特殊性、
8)■ヘアペンシル観察例の頻度とその病的意義、
9)■「古い」個体の割合、
10)■翅の奇形変形率、
11)■病的個体率、
12)■小型個体率、
13)■時期による翅の色調変化、
14)■食草、
15)■吸蜜植物の種類と時期による推移(画像提示)、
16)■単独および集団での活動パターンとそれに影響を及ぼす諸因子(温度、雨、霧、風、日照、時間帯、植物の状況、気象の年毎の変動、等。他の生物の頭数や活動との関連も考慮)、
17)■夜間および雨天時の過ごし方(画像提示)、
18)■吸蜜植物と他植物との戦いの年次変動と吸密植物を保護する試みの成果、
19)■「飛翔パターンの二十分類」とそのうちデコ平で観察されるもの、
20)■捕食生物(昆虫類、鳥類、両生類、多足類、哺乳類等。一部画像提示)、
21)■南下移動開始の八種の兆候、
22)■特異な行動例、
23)■夏期の近距離移動とその意義付け、
24)■台湾と二十数都府県への遠距離移動の頻度と分布、
25)■南下移動の時間的分析と経路分析、
26)■デコ平への南下例とデコ平が関わる北上例、
27)■デコ平滞在の最初と最後の時期、
28)■遠距離移動の際の翅の破損と体色変化、
29)■全国的な発生頭数・移動頭数推計のための理論的枠組み
(注:内容は時間に応じて取捨選択する予定)。

TOPに戻る