ダ・ヴィンチ創刊10周年記念企画 
第2回 栗田昌裕×養老孟司
   「バカの壁に、抜け穴はあるか」

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 雑誌「ダ・ヴィンチ」2004年6月1日号の誌上にて、養老孟司先生と対談をした。
 その第二回目の内容を紹介するのがこの頁です。

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 <養老孟司先生のプロフィール>:
◎養老孟司1937年生まれ。東京大学医学部卒。同大博士課程修了。医学博士。専攻は解剖学。子供の頃から昆虫や動物に興味を持ち、解剖学教室では標本作りなどデータを集積する基礎的研究の一方で、脳の研究においても第一人者として知られ「ヒトの見方」「脳に映る現代」「唯脳論」「涼しい脳味噌」など著書多数。「バカの壁」は300万部を超える大ベストセラーとなり、新書発行部数における日本新記録を樹立した。近年は科学的領域にとどまらず、文学方面にも活動の 幅を広げている。日本文芸家協会会員。
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 <栗田昌裕のプロフィール>:
◎栗田昌裕1951年生まれ。東京大学理学部卒、同大学院修士課程修了、同医学部卒。医師、医学博士、薬学博士。薬物動態学、肝臓病学、医学統計、システム理論などの研究を進める一方、講演や執筆も行う。
日本初の速読1級の検定試験合格後、速読を入り口としたSRS(スーパー・リーディング・システム)能力開発法を提唱。「読む」ことを音韻言語のみの世界から視覚でキャッチするすべての情報に対応・発展させた情報処理を教える。世界伝統医学大会3回連続グランプリ受賞をはじめ、毎日21世紀賞、2001年提言賞等受賞も多数。
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<本文> CDより抜粋・編集
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---やっぱり学んでうれしいとか楽しいという感覚を得ると、
すごく吸収が早いとか、いつまでも消えずに残っているという
ことがあると思うんですけれども。

栗田■ 身体の局所だけを使っていると、そういう感情が
どんどん萎縮していくんです。だから、本を読むにも文字だけ
を見ているとかではなく、全感覚を使って観察をするということと、
あらゆる体験を通して想像するという、その二つを読む作業に
巻き込んでいかないと、つまらないと思うんですよね。

---脳って、うれしい体験をすると、すごく活性化するって本当ですか。

養老● だって、体験的にみんなそうなんじゃないですか。それ、
モチベーションとかいってますけどね。そういう報酬がいったん来ると、
繰り返し繰り返しやりたくなるんですよね。
何で勉強するやつが勉強するかっていうと、算数なんてそうだけど、
問題って解けたらうれしいんですよね。

栗田■ うれしいですよね。できるとますます勉強するんですよね。

養老● だからアルキメデスが、裸で風呂から飛び出したっていう話はさ、
あれね、みんな誤解してんのよ。僕もずっと若いときは誤解してたけど。
要するに世界的な大発見をしたからうれしんだとか、知らないやつは
そう思っちゃうんです。あれはそうじゃない。
アルキメデスは、風呂の中で思いついた。するとね、
思いついた後の自分と、思いつく前の自分では、全然幅が違うんですよ。
思いついた後の自分は、いろんな問題が解けるんだもん。
で、思いつく前の自分ってのは、その人に比べたら
遙かに能力の低い別人なんですよ。

栗田■ バカの壁を越えられたんですね。

養老● 勉強するってのは決まったアルキメデスが
いろんな知識を得て、頭が良くなってるって意味じゃないんですよ。
そこでがらっと変わってるわけです。アルキメデスって人が。

---自分が変わっていく歓びを体験する情報処理。

養老● それを一度やると忘れないんだ。

栗田■ だから、どこにいても五感を全部使いましょうと。
で本だってただテーブルに向かって読むんじゃなくて、
どこででも文字情報を入れて、しかも視覚情報を入れて、
全部トータルに使うと元気になって、そうすると風景の見え方が
変わって、自分の壁が越えられて、感情的にも豊かになるし、
うれしいよってことだと思うんですよね。
その人が無意識に造ってる壁を取り除くようにしてあげると、
これまでのシステムとは違った仕方で情報処理が
出来るようになるんです。
で、結果としてうれしくなるし、元気になるということが起きるんですよね。
速読もまさにそういうことです。

---それじゃもしかしてバカの壁に抜けた穴があるとしたら----(CDに続く)

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対談をすべて収録したCDの内容:
●男と女の間には
●「速読」で本を理解するとはどういうことか
●身体を使うことの良さ
●入力は「感覚」、出力は「運動」
●反応不良症候群
●田舎のすすめ
●情報は変わらない、変わるのは「自分」
●二宮尊徳読み
●「予測不能」の世界を追え
●アルキメデスはなぜ風呂から飛び出したか
●「うれしい」の効用 (全60分)



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