渡辺真理さんとの対談 第1回

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タイトル

速読って本当にできるんですか? 渡辺真理 × 栗田昌裕

第1回 誰もが速く読めるようになる理由を教えてください!
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 雑誌「ダヴィンチ」の企画によって、渡辺真理さんと対談する機会があった。 
 ダヴィンチ誌に掲載されたその内容を採録する。

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第1回 誰もが速く読めるようになる理由を教えてください!
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雑誌「ダ・ヴィンチ」 
2008年9月6日号50−51頁
発行・発売/メディアファクトリー 毎月6日全国書店にて発売中
構成・文 今屋理香
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 渡辺真理 わたなべ・まり
 ●国際基督教大学教養学部卒業。1990年に入社したTBSを98年3月に退社。同年5月よりANB「ニュースステーション」のキャスターとして出演。現在、ABC・ANB系「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」、CX「熱血!平成教育学院」、TBSラジオ「アクセス」にレギュラー出演中。

 栗田昌裕 くりた・まさひろ
 ●東京大学理学部卒、同大学院修士課程修了(数学専攻)、同医学部卒業。現役医師。医学・薬学博士。26の学会に所属。速読を入口としたSRS能力開発法を提唱し、SRSの研究成果を学会で130回以上発表。「指回し体操」の提唱者であり、NHKをはじめテレビ出演は100回を超え、新聞・・雑誌でも多く紹介される。

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●本文

  第1回 誰もが速く読めるようになる理由を教えてください!
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 このところ、多くの著名人がその有用性を謳って
話題となっている「速読」。
なかでも、ダ・ヴィンチ編集部では、
速く読むばかりでなく、人間の知性や行動を変え、
バランスの取れた最高の読書を提唱している「SRS速読」に注目した。
短時間で本の概要を知るには? 
内容を正確に理解して自分のものにするためには? 
知の世界に遊ぶ喜びを味わうには?--
 SRS速読法の提唱者栗田昌裕さんと、
キャスターとして第一線で活躍していらっしゃる渡辺真理さんに、
語り合っていただいた。


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 ◆「普通の読書」をどんなに急いでも速読にはならない
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渡辺● 自分の読書の速さは気になるものの、
正確に自覚するのは難しいですよね。
強いて言えば、友達が頁を繰る速度と比べて見るくらいしか術もなく、
たとえば散歩でいうと、せかせか歩く人もいれば、ゆっくり歩くタイプもあって、
それぞれに合った速読やリズムだと思っていたので、
読書も同様にそこまで意識していなかったんです。
でも、それを無理なく早くすることが可能で、
また、速く読めるようになった先にはどんな世界があるのかということには、
とても興味があります。

栗田■ いい着眼点ですね。
そもそも「普通の散歩」をしているときは、
目的地に正確に速くたどり着くことや、
効率よくたくさんの景色を見るためにスピードアップするなどということを、
第一に意識していませんよね。

渡辺● やはり、それぞれに慣れた歩き方をしているだけという感じでしょうか。

栗田■ 普通の散歩である以上、
私たちは速さを気にしないし、そもそも速くすることができないんです。
読書も同様で、散歩モードの意識で「普通の読書」をするときは、
どんなに急いでも速読にはなりません。
意識的に速読に切り替えてこそ、
スピードも上がるし、変化も起きるものなんです。

渡辺● 頭のなかの意識のモードを切り替えれば、
普通の読書を超えた速読になって、
レベルの違う読書になるということですか。

栗田■ そうです。

渡辺● 使うモードが変わるということを意識的に出来るものなのでしょうか。

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 ◆脳の「音の回路」を
  「光の回路」に変換するから
  速読ができるようになる

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 今までの読み方をただ急ぎさえすれば速読になるのかといえば、答えはノー。
スピードも理解も格段に向上する本当の速読がスイスイできるようになる鍵は、
言葉を処理する脳の回路の使い分けにある。
従来の黙読・音読は、しゃべる速度の言葉を聴覚を通じて
順番に処理する速さにしかならない。
一方、SRS速読は、ページ全体を視覚からまるごと瞬時に取り入れる。
つまり、本を読むときに、わざわざ聴覚に迂回する方法ではなく、
視覚に直接言葉を取り入れる方法に切り替えることで、
比べ物にならない速さを可能にするのだ。
聴覚の細胞約2万に対して、視覚の細胞は約1億2千万。
聴覚をベースにするか、視覚をベースにするか、
働く細胞の数だけでも6千倍の効率になる。

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栗田■ 言葉を耳から聞いて、理解して、話して伝えるという聴覚的な処理のプロセスを、
私は「音の回路」と呼んでいます。
これが「音読」という一般的な読み方の速さの基準です。
一般の人の黙読や音読の場合、一分間に文庫本で1、2ページ程度、
600字から1200字くらいの範囲が限度ですね。

渡辺● はい私たちは、学校教育を受けるなかで、
まず音読で一文字ずつ読むことから習い始めますよね。
つまり「散歩」の一歩一歩から。
その方法と速さをもとに、ずっと文字を読み続けてきたということでしょうか。

栗田■ そうなんです。でも、考えてみてください。
私たちは、音読による言葉使いを学ぶ前に、
生まれたときから風景を見ていますよね。
風景を見て理解するときに、
いちいち声に出して確認しながら頭に入れているでしょうか。
そこでは音の回路を介さず、一瞬で全体を理解していますよね。

渡辺● ああ、そうか…。

栗田■ それなのに、小学校になると、
紙の上に活字があったら音読しなさいというところから
、読書における言葉の遠回りな処理が始まった。
それは、私たちが風景を自然に素早く見ていた
ヘリコプターの空中飛行の世界から、
ぐっと世界が狭まって、
歩く散歩の世界に、とどまっているようなことなんです。

渡辺● 音の回路で捉えて、音の回路で理解して、
そして音の回路で表現して…
…そういうことをずっと続けてきていたわけですね。

栗田■ そこから離れることができないと、
速読ってできるんですか?
という疑問になってしまうんですよ。
でも、本の文字も視覚にとっては風景と同じです。
耳ではなく、まず目から入ってくる視覚的な言葉は、
風景を一瞬に見てわかるのと同様に頭に入れられるものなんです。

渡辺● なるほど。

栗田■ つまり、子どもの頃からの習慣化で、
音読による言葉の処理が
私たちの普通の読書の速さや理解の質や量を決めてしまっているだけ。
音読というモードから切り替えて、
目の働きを充分に使って、
一瞬で見てわかるという回路も活用して読書をすれば、
非常に速い読書が実現しますよ。
これを私は「光の回路」による「光の読書」と位置づけて、
SRS速読のメソッドとして提唱しているんです。

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 ◆「速読」で本が読めるようになると、未知の可能性が広がる
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渡辺● 本を読むときは一文字ずつゆっくり処理している人が、
スポーツを見ているときは広いスペースの変化を速く一瞬で見ている。
この壁がはずれるということですか。

栗田■ そうなんです。
速読ができるためのポイントは、
ページの上にある活字の群れを風景として見ることができるかどうか。
それだけです。

渡辺● モードの使い分けができるようになるということは
知性や頭脳の働きにもつながって当然かと思います。
それを習慣化するトレーニングが速読ということですが、

栗田■ 最高の読書とは、
活字の風景を記憶する必要は全然なくて、
そこにあるものがなるべくたくさん正確に見えていればいいわけです。
著者の意図やたくさんある情報の中のメッセージなど、
何が大事で何が大事じゃないかを瞬時に判断して、
大事なものを取り込んで、役に立てていくということ。
だから、速読することは頭の使い方のレベル向上にもなる。

渡辺● それが最高の知性の働きにつながっていくんですね。
それを習慣化するトレーニングが速読ということですか。

栗田■ そうです。速読の本当の効果は、
単なるスピードではなく全体的な能力の向上です。
それは本を速く読んで日常的に簡単に磨いていくのが一番なんです。
その方法を説明しましょうか。……(次号に続く)

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